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heartwarming communication
第2回 『パラダイムシフト』

健康学習2006 VOL.18-6 by CEO@淺田 匡彦


「先生、オレ・・・今までの考え方を全て覆さないとあかんかもしれへんわ・・・」
初めて健康学習の研修会に参加した友人S氏の言葉だ。

初学会から帰ってきたボクは懇意にしている友人S氏に健康学習の感動を伝えた。
「どう良かったん?」と聞くS氏に「とにかく凄かったよ!もうすぐ大阪で研修会開いてもらえるから1度出てみてよ!」という、答えにならない答えを伝えるボクがいた。
どうもボクは受けた感動を人に伝えたり、説明したりするのが苦手な様だ。
行く前は「オレはすぐに信じない性格だから眉唾で聞くで!」と言っていたS氏だが、研修会が終わった後に発した言葉が冒頭のものだった。

人は長く生きていくうちに“固定観念”というモノを知らず知らずに身に付けてしまう様だ。
「良いですか!我々医療従事者は、学校で病気を診る事を教え込まれてしまいます。だから、悪いところばかり見付けようとする…何故、良いところを見付けようとしないのでしょうか?」
大阪の研修会で石川先生が言った言葉だ。S氏はきっとこれに反応したのだと思う。
我々歯科医師も全く一緒で、虫歯の発見に躍起になる。虫歯になってしまった歯を診るとマイナス面だが、大丈夫な歯もあるわけで、これはプラス面になる。しかし、そのプラス面には全く触れようとしない。そういう習性が身に染み込んでしまっている。そして、それを「正しい」とも「間違い」とも思わない自分がいる。この事が一番怖いのかもしれない。
人は褒めてもらって悪い気はしない。褒めてもらって怒る人はいない。
我々の日常の中の対患者さんへの言葉を考えてみるとマイナスの言葉が確かに多い。
「何故、ここまで放置していたのですか?」
「このままいくとどうなるか解っていますか?」
「もっと○○しておけばこうならなかったのですよ!」
「こんなになってどうするのですか?」
もっといっぱいあるだろう。
患者さんもこれに慣れてしまっている。
初めて来院する(虫歯がひどい)患者さんはしかめ面で来院する。まるで叱られるのを覚悟しているかの様に。
しかし、それでは人は変わらない。
一歩前に足を踏み出してもらう為には、希望を持たなければ踏み出せない。その為に、「良い面」を見つけて褒めてあげる。そして、一歩を踏み出してもらうことも肝要なのだろう。
悪い面は「悪い!」ときちんと伝える。しかし、良い面は「良い!」とこれもきちんと伝えること、「悪い面」と「良い面」のバランスを取る事が大切なのだろう。

研修会の翌日、新患が来院した。
子どもに虫歯を作ったという自責でお母さんの顔は渋い。その事に気付き、今までとは意識が違う自分に気付きボクは満足する。
「よし、このお母さんを前向きにしよう!」
そう思った。
「お母さん、虫歯…結構ありますね!」
(よし、先ずは「悪い面」はきちんと伝えたぞ!)
「はい、叱られるのを覚悟で来ました」
とお母さんは言った。
「叱らないですよ(微笑)、確かに虫歯が出来た事は残念ですよね?でも、大丈夫な歯もあるんですから…その大丈夫な歯をどう守るのか?そして、何故大丈夫だったのかを一緒に考えればこれからが見えて来ませんか?」
(よし、これで「良い面」も伝えたぞ!)
ボクがこう言うとお母さんの顔が少しほころんだ。これをボクは見逃さなかった。もう少し褒めれば、きっと良い笑顔になり、お母さんは「頑張ろう!」ときっと思ってくれる、ボクはそう感じ取った。
「それにね、お母さん、今日こうしてここに来てくれたじゃないですか!これって進歩なんですよ!お母さんは色んな思いを抱えて、そして、考えてここに来た…人は行動を起こさなければ何も始まりません!今日、お母さんは行動を起こしたんですよ、それって凄い事ですよね!」
お母さんの顔が笑顔に変わった。
そこからボクは矢継ぎ早にお母さんを褒めた。「上手く行っている!」ボクは自分に酔っていた。
一通り話し終わってお母さんにボクは聞いた。
「何か疑問、イチャモン、ありますか?」
お母さんはニコニコしながら返してくれた。
「先生、凄く嬉しかったのですが、これって褒め殺しですか?」
お調子者のボクはまたしてもやってしまった様だ。褒めるのを途中でやめておくべきだった。

人は一方向ばかり見ていると悪循環のスパイラルに陥る事がある。視野が狭まり、まるでエアポケット落ち込んでしまうかの様に。しかし、少しだけ違う方向も見てみるとまた違う景色が見えてくる。「なんだ、こんな景色があったのか!」と思えることがきっとあるだろう。その為に、色んなモノに触れる事が大切だと、ボクは思う。色んなモノに触れる事により、違う方向を見るきっかけがきっとある。
その後のS氏。彼が元来持っていた発想の種が花開いてきたと思う。今ではボクの及びもしない発想で語ってくれてビックリさせられる事も多々ある。今後、彼の発想力は益々冴えるだろう。まさに、パラダイムシフトだ。


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